ぬかるみ小路に逸れる

文章の溜まり場所として使っていこうと思います(超不定期)

超断片⑤

断片的なもの


「人間が・・・よく言えば賢く認識したものをカメラはそのまま写しだすからね。人間の目が一瞬だけ見て判断したものをカメラはその一瞬だけの部分を改めて写しだせるからね。心霊写真のトリックはこれさ。
その時の脳の認識とカメラとの誤差だよ。実際にそういうカタチやモノだったのを人間は記憶に覚えていない、カメラは覚えていたというだけのハナシさ。
あとは物理的な反射現象だったりカメラとものとの計算における考慮の無さとか原因はほとんど自然現象だよ。」

「心霊っていうのも自然現象なんじゃないの。
だって人は死んだらみんな自然に帰っていくじゃない。心霊写真が自然現象っていうなら、幽霊だって自然現象になるんじゃないの?」

今までずっと静かでほとんど十野とも喋ることもなかったハルが突然口を開いた。
周りにいたミカたちもおや、という驚きの目でハルを見る。ユウジもハルの久しく聞いた声に思わず振り返っていた。
十野は思い掛けない人物から言葉を掛けられたが、いつもの調子のまま構わず反論に出た。

「でも、心霊にはその言葉の成り立ちとして心って字がついてる。心っていうのは人間の持つ感性だ。それは自然じゃない。自然はそこにもとから存在する現象であって、人の心の感性で変えられたり捉えられるものじゃない。
霊っていう言葉の前に心という言葉がつく意味。・・・心霊写真が自然現象によって起こるというのはボクの語弊があったよ。正確には自然現象を心霊写真だと勘違いしている。それこそ人の心の感性で勝手にそう思って変えて捉えてるということさ」
十野は相変わらずの早口だった。

ハルは「・・・違う、違うの。そういうことではないの。私がいいたいのは、」と言って彼女は一呼吸置く。
「人は自然から生まれて自然に帰って行くのに、人だけを自然から切り離された場所に置いて考えるのは不自然だといいたいだけ。
・・・だからその自然現象も自然に還った人たちが起こした現象だとしたら心霊は自然でもあるのよ」
十野ははははっと笑った。
彼がこう笑うのは面白いという様子で相手を見下したような時だ。
「真田さんがこういうのに興味あったなんて意外だなあ、驚いたよ。真田さんのそれは屁理屈だと思うな。そもそも人が自然に還るというのだって人の心の捉え方、だよ。そして死んだ人たちが自然現象を引き起こす、だなんてそうだったら今ごろボクらの周りは不可思議なことだらけかもね?」

ハルと十野の言ってることはお互い平行線のように思えた。ハルは見えない自然を信じて十野は見える自然を信じている。自然はどこにもあってでもそれを確実に予測することは実際には不可能であり得て。