ぬかるみ小路に逸れる

文章の溜まり場所として使っていこうと思います(超不定期)

おんな⑧

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私は女性向けの出会い系のサイトを思わず見ていた。
表向きは出張ホストとあるが所謂女向けの風俗で追加オプションで料金を上乗せして払えばセックスも取扱う。
今はリモート出張中とあってどうやら今はパソコンやスマホのカメラを使って顔を見せ合いながらライブチャットもできるという。

初回お試し無料と書かれたサイトには男の顔写真とプロフィールが並んでいる。利用者が会員登録を済ませ気になった人を選び連絡のボタンを押すと相手から連絡がきて通話ができる。

この時の私は私ではなかったようだった、何かに憑かれたように私はWebサイトを見ていた。
人気No.2と書かれた男に目がとまった、普段の私なら絶対にこんな思い切ったようなことはしないのだ。私は会員登録に自分の情報を(半分はフェイクにして)入力して登録を済ませると躊躇いもなく連絡のボタンを押した。

不思議とドキドキとかそういうのはなかった。そうして10分ほど待っていると携帯に着信があった。
もしもし、と出ると相手の男は案外普通の会社員のような話し方で意外と礼儀正しいのだ、ホストはみんな素養がなくて無礼であるというのが私のイメージだったが、拍子抜けしたような気になった。
「青山聡美さん・・・ですか、下の名前で呼んでいいですか」
「・・・はい、どうぞ・・・」
「今日は、聡美さん、どうしたんですか?何か悩み事とかあったんですか」
と聞かれた。不意をつかれたような気がしてここで初めてドキっとした。
「え・・・と、なんででしょうか・・・」
「この時期に連絡してこられる方はみんな困った事とか悩みとかが多くて、僕の勘なんですけど聡美さんもひょっとして・・・と思って」
「あ・・・、ええと・・・」

もちろん相手は女の心を操るプロで所謂営業トークなのだ。それでもこちらの心が見透かされているような気になって落ち着かないのだ。
この人に何でも全てを打ち明けて委ねたい、という女が数多もいるし、いたのだろう。

私は不躾に担当直入に要件を言おうと思った。
「セックスの予約はできますか。
・・・処女なんですけど、私は」と私の言葉は最後にいくにつれて小さくなった、言った後で鼓動が速くなって身体が顔が熱くなった。

「・・・つまり処女を貰ってほしいということですか?・・・僕としては全然構わないですよ、ただ、聡美さんは・・・、僕で本当にいいんですか?」
「・・・・・・・・いいんです、早く捨てたいんです」
私はずいぶんと前のめりだった。
じゃあ・・・ととんとん拍子に話は進む。
相手の男は淡々と料金プランの説明をする。セックスの約束は後々何かあった時のために料金は倍にかけられる。だがこの割高な料金が保障のようなもので大人の約束、のような役目を果たしていると相手はいう。
その為に身を溺れさせる女も少なくはないのだろうが。

男が最初からいきなりの行為では私も準備ができてないと思うから次の機会にWeb上でセックスしてみようかと言った。
私が「Web上で?」と言うと男は
「自分で慰めるって感じかな、お互いの身体を見せ合うようにしてさ。言葉を掛け合うだけでも結構気分上がるし高まるよ。まずは練習してみようよ、聡美さん」
私は「・・・これから、今からでもできますか?」と尋ねた。

すると相手は笑って
「聡美さんって結構肉食なんだね、いいですよ。でも一度通話を切ってもう一回新しく始めましょうか。新規で料金発生するのはすみません。あ、でもオプション代とかはとらないので安心してください」
準備が終わり次第連絡を寄越すという。

サイトに再びログインしてオンライン決済で料金を支払ってからもう一度連絡ボタンを押してくれればいいと男は言った。

彼のページには先ほどまでなかったキープ中というアイコンがあった。私はクレジットの登録を済ませて、決済を完了させもう一度彼の連絡ボタンを押す。

するとすぐに電話があった。
「はい、改めてありがとうございます。ところで聡美さんはパソコンを使ってますか?スマホ?」
「・・・パソコン・・・です」
「じゃあ、コードを送りますね、パソコンのカメラちゃんと見ててね。あと音声のミュート解除も忘れないでね」
とオンライン上でやり取りするためのコードが送られた。
このページに入るとパソコンの内部カメラが起動して私の顔と私の部屋が映る。

言われた通り音声のミュートを解除した。画面は2つに分かれていて半分に私の映像が流れてもう半分は真っ暗だ。片方には相手の映像が映る仕組みなのだろう。
程なくして男の音声が聞こえ、同時に相手の顔が映った。



(超展開になります)