ぬかるみ小路に逸れる

文章の溜まり場所として使っていこうと思います(超不定期)

おんな⑨


「はい、はじめまして」と挨拶で映った相手の男はまだ年も若そうに見えた。
髪色は明るく顔は一応No.2とだけあってそこそこに今時の若者らしく可愛らしい顔をしていた。私の顔と彼の顔が並んでいると私はなんだかやっぱり自分が惨めな存在のようになった心地がした。
「聡美さん・・・ですよね、凄く僕の好みだなあ・・・って感じの方です、画面越しではありますけどお会いできて嬉しいです。」
「はい・・・それはありがとうございます・・・」

褒め言葉なのか、わからないがとりあえず素直に受け取っておく。私が今からやろうとしていることが急に恥ずかしくなった。
「・・・じゃあ早速ですけど、やっちゃいますか?」と尋ねられた。
私は画面越しの彼の前で何をしようとしているのだろう、目的は処女を失うことだ。
その”本番”の前に今ここで”練習”をするのだ。

「・・・どう、すればいいんでしょう」
「ええと、まずはその場でお互い服を脱いでいきましょうか。身体を見せ合いましょうよ」

私が躊躇してると彼はじゃあ僕から脱ぎますね、といって着ている服に手をかけた。
男は脱ぎやすい服を着ているようだった。シャツとスエットズボンのラフな格好で、部屋着のような感じだった。彼はまずシャツを脱いで上体を晒した。余分な肉のない意外と鍛えられてるような男の細い身体だった。

彼はなんか恥ずかしいな、と呟きながらズボンも脱いでいった。ボクサー型の灰色の下着だけを纏った姿が画面に映し出される。
そこで彼は「聡美さんも、そろそろ。僕が見てるから」と私に脱衣を促した。

「お互い下着は一緒に脱ごうよ」と言われ、私は微妙に震える足でその場に立ち上がり上着に手を伸ばす。
一枚脱いでしまうと後は流れ作業のように服を脱いでいった。相手の男は微笑みときどき相槌を打ちながら私の脱衣を見ている。
私の身体はとうとう下着だけになった。

「それじゃあ一度お互い全身映るようにしようか」と言ってカメラに全身が映るように立ち位置を調整する。彼はよく見えてるよ、と言った。
そうして「聡美さん、上から脱いでいこうか」と彼は言った。
私はブラジャーのホックに手を伸ばしたが、指が強張る。「大丈夫だよ」と言われてもなかなか指は動かない。

「・・・じゃあ、僕のこれ」と言って男は彼の下着を差し、見せられる。
「聡美さん、僕もうこんなになっちゃいました・・・聡美さんのこともっと知りたいです」
と言った。男のそこは既にそうなっている。

「聡美さん」と囁かれた。
下着を脱ぐことを身体を催促されているのだ。「あ、の・・・今・・・します」と私は震える声で言った。私は改めて上の下着を脱いだ。私の乳房が画面越しに露わになった。
「綺麗な形だね」と彼は言った。
私は緊張と恥ずかしさとで身体が暑苦しくなった。
「すごく緊張してる?聡美さん、下脱ぐの今日は無理しなくてもいいよ。僕は脱ぐけど、聡美さんは下着をつけたままでいいよ」
といって彼は下着を脱ぐと男の屹立したそれが映った。これからお互いマスターベーションをしながら見せ合うのだ。

私は男のそういう状態のをフィクションの中で知識として見て知っていたが、こうして間近に見たのは始めてだった。
こんなにも尖ったものを女は躊躇いもなく受け入れてしまえるものなのだろうか、それも相手が親しかったり愛した男というだけで、簡単に侵入を許してしまえるものなのだろうか。

私は身体の熱が急に冷めて冷静になっていくように目の前にあるものをまじまじと見ていた。私の視線に「聡美さん、これを見るのは始めて?男ってこんな風になるんだ」と彼は言った。
男ははにかみながら画面の向こうからこちらに向かって「これから、していくからね」と言った。男はゆっくりと自分のを握って動かした。私はごくりと唾を飲んだ。

男のそれは脈々と熱打っているように見えた。彼はしっとりとした声で「聡美さんも、早く」と誘った。

私は恐る恐る指を自分の股に持っていった。「ねえ聡美さん、二人で一緒にいこうか。僕たち二人、実際に繋がってると思って、セックスしてると思って。」
「・・・はい・・」と応えて私は指をゆっくりと動かす。「次はこれが聡美さんの中に入るから」と
男は自身の性器を握りながら言う。

彼の扱う手と私のなぞる指を次第にシンクロさせていった。私の呼吸もいつの間にか熱くなっている。彼の「聡美さん今、いこうか、いくよ」という声とともに彼の手の動きは一段と早くなった。

「は・・・い」と応えると「聡美さん・・・!」と彼は私の名前を呼んで達したらしかった。「あ・・・」と私は思わず声が漏れた。

気持ちがいいからとかそういうのではなかった、私は男が射精をするところを初めて見たのだった。私は正直にそれに驚いた気持ちの方が強かったのだ。

彼は呼吸を荒くさせながら「聡美さんはちゃんといけた?」と聞いた。
「・・・たぶん、大丈夫・・・です」
「そう?次は実際に会って抱き合おうね」

それから私たちは服を羽織って雑談をしたように思う。
彼の話はなかなか意外と面白くて、やっぱり彼によって救われる女の子たちは沢山いるのだろうなと思えた。

彼が次は気が早いけど実際に会ってしようか、と言って会う日にちを決めようと私に色々と提案をしてきて、クリスマス後27日に実際に会う約束までした。
私はただ彼の言うことを黙って聞いて適当な相槌を打って頷いていただけだった。なぜだかもう何も考えられなかった。

セックスとか処女とか恋人とか恋愛とか私は今一体何をしているのだろうといった無の気持ちがいきなりどっと押し寄せていた。




一部少しだけ変えましたが露骨な表現がまずいかもしれないです・・・。