「 くん、全然歩幅合わせてくれないね」と彼女に言われた。嘘だ。
はちゃんと歩幅を合わせていると思っている。彼女の身体が よりも小さいから、歩幅が合ってないように感じるだけで は彼女に歩幅を合わせる努力をしている。
「もう、私のことどうでもいいんでしょ?」と彼女はふてくされたように言うけれど、そんな事はない。 はちゃんと彼女を大事に思っているけど彼女はそれに気付いていないんだけなんだ。
「そんなことないよ」とこっちが言っても彼女は押し黙ったままだ。彼女のこういうところはやや面倒くさいと感じるところだが、これもいつもの事だ。数時間経てば元通りになる。
並木道の前に彼女と の距離は広く空いている。彼女の方が足早に歩いてしまったので、彼女を先頭にしながら はその後ろについていくだけ。
今日が雨の日だったら、彼女どうしてただろうか。今日は一応晴れだから彼女は強気に前を歩いていく。土砂降りの雨だったら、「雨降って地固まる」ように傘をさして一緒に歩いていたかもしれない。
前を歩いていた彼女が立ち止まった。
「 くん、歩幅全然合わせてくれないんだね」と言われたので は小走りして彼女の隣に立ったけれど、彼女は相変わらずの不機嫌だった。前を先に歩いていたのは彼女の方だったし、何となく近づきがたい雰囲気のおかげで は歩幅を合わせようにも遠慮していた部分はある。
「一緒に歩いてもいいのかい」
「・・・・・・お好きにどうぞ」
彼女の了解を得てみて、 は歩幅を合わせる権利を獲得する。
延々と続く並木道の前に一緒に歩くのは、見たこともない巨人と彼女だった。